警備・防犯関連銘柄:多様化する脅威と各企業の対策

綜合警備保障

現代社会において、安全・安心への希求はますます高まりを見せています。
巧妙化・多様化する犯罪や頻発する自然災害、そしてサイバー空間における新たな脅威など、私たちを取り巻くリスクは日々変化し、その対策は個人から企業、社会全体に至るまで喫緊の課題と言えるでしょう。

このような背景のもと、警備・防犯関連市場は、従来のフィジカルセキュリティの枠を超え、AI、IoT、DXといった先端技術を積極的に取り込み、新たなステージへと進化を遂げようとしています。

本記事では、警備・防犯関連企業に焦点を当て、各社の取り組みと今後の展望を分析します。
セキュリティニーズの高度化と技術革新が交差するこの分野で、各社がどのような対策を講じ、未来の安全・安心をどのように描いているのか、その現在地を探ります。

総合力と技術革新で”社会システム産業”を構築「セコム」

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1962年創業のセコムは、「社会システム産業」の構築をビジョンに掲げる日本の代表的なセキュリティ企業の一つです。
オンライン警備を核に、フィジカルセキュリティ分野でも事業基盤を有しています 。
加えて、防災、メディカル、保険、地理空間情報、BPO・ICTといった多様な事業も展開しており、これらが同社の特徴となっています。

同社はAIやIoT等の先端技術を警備・防犯サービスに融合させ、高度化と効率化を追求。
「セコムAI行動検知システム」やAI搭載ロボット「cocobo」は省力化と警備品質向上を目指します。
またスマートフォン活用の「セコムスマホID」など利便性も重視。
これらの技術革新は従来の警備概念を刷新し、市場へ新たな安全価値を提供しています。

「セコムグループ2030年ビジョン」と「ロードマップ2027」に基づき、持続的成長のため事業展開を推進。
既存事業強化に加え、米クラウドセキュリティ企業への投資や国内通信インフラ企業へのTOBなどM&A・アライアンス戦略も活用。
これらはグローバル展開や新技術導入を通じた事業多角化を企図したものと考えられます。

他方で、技術開発競争は継続し先端技術への投資が求められます。
市場ニーズ変化への対応や、部材価格・人件費といったコスト動向も事業運営上の考慮事項です。
これらの事業課題に対しリスク管理、イノベーション推進、効率的な事業運営といった企業努力が、今後の事業展開において重要になると考えられます。

“ありがとうの心”と”武士の精神”で社会の安全・安心に取り組む「ALSOK(綜合警備保障)」

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1965年創業の綜合警備保障(ALSOK)は、「ありがとうの心」と「武士の精神」を経営理念とし、社会の安全・安心確保を事業目的とする日本の大手警備会社の一つです。
機械警備、常駐警備、警備輸送を主な内容とするセキュリティ事業に加え、FM事業等、介護事業、海外事業も展開しており、多様なサービスを組み合わせたソリューション提供を特徴としています。

同社は、多様化するニーズに応じ、法人向けにはセキュリティシステム「ALSOK-G7」やIT機器関連のトラブルに対応する「ALSOK ITレスキュー」などを開発・提供しています。
また、個人向けにはサービス「HOME ALSOK Connect」およびその操作端末「スマホゲート」などを提供しています。

中期経営計画「Grand Design 2025」を策定し、既存事業の強化と新規事業領域の開拓を進め、事業の継続的な発展を目指しています。
特に、東南アジアを中心とした海外事業の展開や、M&Aを通じた事業基盤の強化に取り組んでいます。
経営指標としてROE等を設定し、企業価値の向上に努めています。

一方で、生産コストの上昇、多様化する社会リスクへの対応、継続的な研究開発といった経営課題が存在します。
これらに対応するため、TCFD提言への賛同や温室効果ガス排出量削減目標の設定、大規模災害への備えとしてのBCP整備など、社会貢献にも関連する取り組みを進めています。

AIとセキュリティの融合で”物理セキュリティのDX”を推進「セキュア」

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株式会社セキュアは「AI(画像認識技術)×セキュリティで新しい価値を創る」をビジョンに、物理セキュリティシステム事業を手掛けています。
主力製品は入退室管理「SECURE AC」、監視カメラ「SECURE VS」、画像解析「SECURE Analytics」で、ソフト開発からハード選定、施工、保守まで一貫したサービス提供体制が特徴です。

同社の特色は、顔認証や行動分析などAI画像認識技術を応用した開発力です。オフィス向け「SECURE AI Office Base」や店舗無人化を支援する「SECURE AI STORE LAB 2.0」は、物理セキュリティ分野のDX推進事例と言えます。
また、AI警備ソリューション「GUARD FORCE Standard」も提供し、人手不足が課題の現代でセキュリティ維持と運用負荷軽減を目指しています。

セキュリティ市場およびIoT市場の成長を見据え、同社はAI技術を軸としたソリューションで市場展開を進めています。
メルコホールディングス(現:株式会社バッファロー)との資本業務提携やメディアシステム買収は成長戦略の一環であり、技術力や販売チャネル強化を図る方針です。

他方で、急速な技術進化への対応として継続的な研究開発投資が求められ、国内外企業との競争も存在します。
棚卸資産の適切な管理や専門人材の確保・育成も重要な経営課題です。
こうした事業環境を踏まえ、同社は「安心・安全に働く環境」の創出に取り組んでいます。

>>セキュアについてもっと詳しく顔認証を活用した入退室管理システムを提供「セキュア」がマザーズ上場へ

コミュニケーション技術で社会の安心をデザイン「アイホン」

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アイホン株式会社は、インターホンを中心とする電気通信機器の専門メーカーです。
戸建・集合住宅向けに加え、ケア市場や業務市場向けシステムなど幅広い製品群で社会の安全・安心に貢献してきました。
国内に強固な事業基盤を持ち、北米、欧州、アジア等グローバルに販売・生産拠点を設けることで、地域ニーズに対応した製品供給体制を構築しています。

同社の特徴は長年培ったインターホン技術を基盤とした製品開発力です。
近年はIPネットワーク対応インターホンシステムに注力し、業務市場や海外で採用が進んでいます。
集合住宅市場では宅配ソリューション「Pabbit」を標準搭載し製品の機能性を向上。
ケア市場の見守り支援システム、戸建住宅のワイヤレステレビドアホンなど、各市場特性に合わせた提案が際立ちます。

国内外におけるリニューアル需要や、セキュリティ意識の高まり、高齢化に伴うケア市場の変化は、同社にとって事業環境の変化要因となり得ます。
IPネットワーク技術を活用した製品の展開や、グローバルな生産・販売体制の効率化は、今後の事業展開における検討事項と考えられます。

一方で、国内の新築住宅着工数の変動や、海外市場における競争環境は事業に影響を与える可能性があります。
部品の安定調達や為替変動リスクへの対応、継続的な研究開発による技術力の維持も、事業運営における重要な要素です。

>>アイホンについてもっと詳しくインターホンの最大手企業「アイホン」成長の軸足を海外へシフト、さらなる拡大なるか?

多角化戦略とM&Aでセキュリティ分野の進化を目指す「あいホールディングス」

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あいホールディングス株式会社は「全ては信頼と誠実から始まり人と社会に認められる価値を創造する」という理念のもと、多岐にわたる事業を展開しています。
中核の一つであるセキュリティ機器分野では、マンション向け監視カメラや法人向けの大型警備案件なども手掛けています。
加えて、カード機器、情報機器、計測機器、情報通信、建築設計事業も傘下に有し、複数の専門企業で構成される企業グループです。

同社のセキュリティ機器事業は、グループ傘下の専門企業が開発・製造・販売を担い、市場のニーズに応じたソリューションを提供しています。
マンション市場ではリプレイス需要などがあり、法人向けにも大型案件を獲得しています。
近年はビジネスホン分野の強化を目的としてM&Aを実施し、岩崎通信機を完全子会社化、ナカヨもTOBにより子会社化しました。

今後、セキュリティ分野においては既存の顧客基盤を活用しつつ、M&Aによるグループ事業間の連携を通じて、事業展開を進める方針です。
また、省エネルギーや防災といった社会課題に関連する事業として、脱炭素システムや監視カメラを活用した防災ソリューションにも取り組んでいます。

一方で、各事業分野において競争環境が存在し、技術進化への対応や部材調達コストの変動といった経営課題も認識されています。
これらの課題に対処するため、気候変動問題への対応(TCFD提言への取り組みなど)やBCPの見直しなども進めていくようです。

>>あいホールディングスについてもっと詳しくマンション向けセキュリティで市場シェア拡大「あいホールディングス」の安定収益モデル